「販売コストを削減したい」「顧客と直接関わりながら商品やサービスを提供したい」と考え、中抜きに興味を持っている方も多いのではないでしょうか。しかし、実際に中抜きを行いたくても、どのような仕組みなのかわからず、一歩を踏み出せないこともあります。
この記事では、中抜きの意味や仕組み、メリット、デメリット、成功させるポイントなどをわかりやすく解説します。

中抜きとは
中抜き(ディスインターミディエーション)とは、販売経路から卸売業者や販売代理店、小売業者などの中間業者を除外し、顧客に商品やサービスを直接販売・提供することです。DtoCも中抜きを実現するビジネスモデルの一つで、DtoCマーケティングを通じて顧客と直接コミュニケーションを取ることで、商品の認知度を高めたり、販売につなげたりできます。さらに、3PL(第三者物流)などの物流サービスや配送インフラが整備されたことで、中小企業でも中間業者に頼らず、商品を購入者へ直接届けやすくなっています。
中抜きは、商品を販売する企業だけでなく、サービスを提供する企業でも可能です。たとえばホテル業界では、楽天トラベルやじゃらんなどの予約サイトを介さず、自社ウェブサイトから宿泊予約を受け付けることで、顧客と直接取引できます。金融業界では、証券会社や銀行などの仲介者を介さず、個人が自ら株式を購入したり、投資や取引を管理したりすることも、中抜きに該当します。
中抜きの仕組み
1. 商品を製造する
卸売業者などの中間業者に商品の企画や調達を任せず、商品開発から製造までを自社で主導します。事業が成長して製造を外部のメーカーに委託する場合でも、ブランド側が素材の選定や品質管理を主導する点は変わりません。メーカーと直接提携することで、商品の仕様や品質を自社で管理し、ブランドの価値観を反映した商品を作ることができます。
2. 直接販売チャネルを構築する
商品が完成したら、自社のECサイトや店舗、SNSなどを通じて、消費者に直接販売します。小売店などの第三者を介さず、自社販売にすることで、商品の魅力やブランドストーリーなども顧客に直接伝えられます。自社ECサイトを構築する際は、Shopify(ショッピファイ)などのECプラットフォームが活用できます。
チーズケーキ専門店のMr. CHEESECAKEは、2018年にシェフが立ち上げ、自社ECサイトや自社店舗を通じて商品を販売しています。商品だけでなく、ブランドの世界観やストーリーを発信することで、顧客に直接ブランドの魅力を伝えています。
3. フルフィルメントと配送を管理する
顧客から注文を受けたあと、商品を梱包して発送し、顧客に届けるまでのフルフィルメントを管理します。自社で物流業務を行う場合もあれば、物流会社などのパートナーに委託する場合もあります。どちらの場合も、梱包方法や配送方法を自社でコントロールできるため、開封体験まで含めてブランドの世界観を伝えられます。
4. 顧客と直接つながる
小売店や中間業者を介さずに商品を販売するため、企業が顧客と直接コミュニケーションを取れます。SNSやメールマガジン、ポップアップストアなどを通じて、商品の情報やブランドストーリーを発信することも可能です。
日々のコミュニケーションを通じて顧客から寄せられた意見や問い合わせを基に、ニーズを把握し、商品やサービスの改善に反映することで、顧客との関係をさらに深められます。
BASE FOODは、ユーザー限定のオンラインコミュニティであるBASE FOOD Laboを運営しています。コミュニティでは、ユーザー同士が情報交換したり、新商品のアイデアを投稿したりできます。寄せられた意見を商品改善や新商品開発に活用することで、顧客との関係を深めています。
中抜きのメリット
- 中間業者への手数料を削減できる:中間マージンや流通、管理などにかかるコストを削減することで、利益率を高めたり、手頃な価格で商品を提供したりできます。
- 顧客と直接つながれる:中間業者を介さず顧客と直接コミュニケーションを取れるため、顧客の声やニーズを把握しやすくなります。
- ブランドや顧客体験を管理しやすい:ブランドの発信内容や販売方法を自社で管理できるため、顧客体験の設計がしやすくなります。
- 顧客データを活用しやすい:顧客データを自社で収集、管理できるため、顧客の購買行動やニーズを把握し、マーケティングや商品開発などに活用できます。
中抜きのデメリット
- 業務負担が増える:これまで中間業者が担っていた販売、物流、カスタマーサービスなどの業務を自社で行う必要があり、担当者の負担が増える可能性があります。
- 集客や販売に必要なコストが発生する:小売店などの販売チャネルを介さずに自社で顧客を獲得するため、マーケティングやECサイトの運営などにコストがかかります。
- 既存の販売チャネルを失う可能性がある:中間業者との取引をなくすことで、これまで利用していた小売店などの販売チャネルを失い、商品の販売機会が減る可能性があります。
- 品質管理やトラブル対応の責任が増える:中間業者が担っていた品質管理やトラブル対応なども自社で引き受ける必要があり、問題が発生した際の責任や負担が大きくなる可能性があります。

中抜きを成功させるためのポイント
中抜きを成功させるには、顧客との関係構築や物流、マーケティングなど、さまざまな業務を自社で管理する必要があります。ここでは、直接販売を軌道に乗せるために押さえておきたい重要ポイントを紹介します。
ブランド認知度を高める
従来の販売方法では、スーパーや百貨店などの小売店に商品を並べることで、買い物中の顧客の目に留まる機会がありました。一方、DtoCでは小売店などの集客に頼らず、自社で顧客を獲得する必要があります。
そのため、どのような顧客をターゲットにするのかを明確にし、その顧客がどこで情報を得ているのかを把握しましょう。そのうえで、インフルエンサーマーケティングやオンラインコミュニティ、PRなど、自社の強みを生かせる施策に絞って取り組むことが大切です。最初から複数の施策に手を広げるのではなく、1〜2つのチャネルに集中することで、効率的にブランド認知度を高められます。
物流とフルフィルメントを優先する
注文数が増えると、自社の倉庫だけでは商品の保管や梱包、発送などの物流業務に対応することが難しくなります。また、配送先の間違いや商品の破損などのトラブルが発生した場合も、自社で対応しなければなりません。
その場合は、フルフィルメントを物流会社などの3PLに商品の保管や注文処理、梱包、発送などの業務を委託することを検討しましょう。
3PLを選ぶ際は、ブランド独自の梱包に対応しているか、在庫情報をリアルタイムで確認できるかなど、自社が必要だと思うサービスに対応しているか確認しましょう。契約前に少量の注文でテストし、作業の正確さや問い合わせへの対応速度を確かめておくことも大切です。
複数のカスタマーサービス手段を用意する
DtoCでは、商品をうまく組み立てられない、注文した商品が破損して届いたなど、商品や注文に関する問い合わせに自社で対応する必要があり、多くの時間とリソースが奪われます。返信が遅れたり、十分なサポートを提供できなかったりすると、顧客満足度の低下や顧客離れを招く恐れもあります。
そのため、顧客が自力で問題を解決できるよう、ECサイト内によくある質問やサイズガイド、製品の活用動画などを完備しておきましょう。注文状況の確認といった定型的な質問に対しては、AIチャットボットを導入することで、24時間対応可能な体制を構築できます。また、Shopify Inbox(インボックス)のようなメッセージツールを活用して問い合わせを一元管理すれば、対応を効率化できます。
信頼性と透明性を高める
信頼できる小売店で販売されていること自体が商品の信頼性につながる従来の販売方法とは異なり、DtoCでは、ブランドの信頼性や商品の品質を自社で示す必要があります。返金保証や無料トライアル、返品条件をわかりやすく提示することで、購入を迷っている顧客の不安を取り除き、商品の品質に対する自信を伝えられます。
さらに信頼性を高めるには、商品ページに顧客のレビューを掲載したり、許可を得たうえでSNSやECサイトにUGC(ユーザー生成コンテンツ)をシェアしたりする方法も有効です。
在庫とキャッシュフローを管理する
卸売業者から大口注文を見込める従来の販売方法とは異なり、DtoCでは需要を予測したうえで数か月前から在庫を確保する必要があります。需要を過大に見積もれば過剰在庫を抱え込むリスクがある一方で、過小に見積もると、販売機会を逃してしまいます。さらに、受容の季節変動やSNSでのトレンド、サプライチェーンの混乱などによって、当初の在庫計画が大きく狂うこともあります。
リスクを抑える方法として、まずは予約販売や商品のラインナップを絞った少量販売で需要を見極め、反響を確認してから大量生産に移行する方法があります。初めのうちは製造単価の上昇や配送リードタイムの長さといった課題があるものの、過剰在庫による資金圧迫を防げます。また、在庫管理システムを導入して販売状況を把握し、過去のデータをもとに発注を自動化することも有効です。
まとめ
中間業者を介さず、顧客に商品やサービスを直接販売・提供する中抜きには、手数料を削減できるほか、顧客と直接つながり、ブランドや顧客体験を管理しやすくなるといったメリットがあります。
一方で、これまで中間業者が担っていた販売や物流、カスタマーサービスなどの業務を自社で管理する必要があるため、業務負担やコストが増える可能性があります。中抜きを実践する際は、ブランドの認知度を高めるだけでなく、物流やカスタマーサービス、在庫管理などの体制も整えることが重要です。
自社の事業規模やリソースに合った販売体制を整え、中抜きによるメリットを最大限に引き出しましょう。
中抜きに関するよくある質問
中抜きとピンハネの違いは?
中抜きは、中間業者を介さずに商品やサービスを直接販売することを指す一方、ピンハネは、本来受け取るべき金額から不当に一部を差し引くことを表します。
中間業者を介さずに直接販売する方法は?
中間業者を介さずに直接販売するには、次のような方法があります。
- 自社ECサイトで販売する
- 実店舗で直接販売する
- SNSを活用する
- 予約販売を活用する
中抜きのリスクは?
中抜きにおける最大のリスクは、それまで中間業者が担っていた物流やカスタマーサービスなどの業務をすべて自社で対応しなければならない点です。そのため、事業規模や体制によっては運用面での負担が大きくなる可能性があります。




